本記事では、世界でも屈指のヘッジファンドである「エリオット・マネジメント」について解説していきます。
「エリオット・マネジメントのことが知りたい」
「世界最大の投資ファンドが保有する銘柄は?」
「日本株も保有しているの?」
といった疑問を解消できる内容になっているのでお見逃しなく。
他にも、エリオット・マネジメントの基本情報や投資戦略、保有した銘柄、日本株を狙うワケを解説しています。
- エリオット・マネジメントは8兆円を運用する「モノ言う株主」ファンド
- エリオット・マネジメントは8兆円を運用する「モノ言う株主」ファンド
- 日本株は割安で、成長性が見込める投資戦略は割安株を大量保有・企業経営に介入・株主還元を提案
- 保有した銘柄は、AT&Tや旧ツイッター、国内ではソフトバンクグループや東芝、大日本印刷などの大企業
- 狙われた企業の株価は上昇する可能性が高い
- 日本にも個人投資家向けのアクティビストファンドがある
エリオット・マネジメントとは

エリオット・マネジメント(Elliott Investment Management LP)は、1977年に設立された最も古い投資ファンドの1つです。アメリカ、フロリダ州に本社をおき、ヨーロッパやアジアにもオフィスを持つ投資家集団です。
株式だけでなく、ディストレス(破綻)証券、不動産、コモディティ(原油や金などの商品)、プライベートエクイティ(未公開株式)などにも投資しています。
また、世界最大のアクティビストファンドとしても有名です。国内外を問わず投資し、2020年の運用成績はすべての月でプラスを達成。そして年間では、プラス12.7%という好成績(引用:Bloomberg)を収めました。
過去にはソフトバンクグループをはじめとした日本株にも投資しており、投資家の間では、エリオット・マネジメントの動向が注目を集めています。
アクティビストとは
アクティビストは、元々は特定の社会的、政治的、経済的な目標を達成するために積極的に行動する人や団体を指します。
投資業界のアクティビストは、株式や他の金融資産に投資します。その企業や組織の経営や運営に積極的に介入し、変化を促進しようとする投資家のことを指し「モノ言う株主」とも呼ばれています。
彼らは通常、自身の投資における利益最大化を追求する一方で、企業の経営改善、価値向上、株主の権利保護などを主張します。
こうした投資手法を用いて、エリオット・マネジメントはアクティビストファンドとしてこれまで数々の企業に投資し、莫大な利益を築いてきました。
アクティビストファンドの目的
アクティビストファンドの目的は、利益の最大化です。投資家から集めた資金で利益を上げ続けなければならないためです。
特徴として、まず投資先の株を大量保有し、大株主になります。そして株主提案や株主提案者による取締役会への出席などを通じて企業経営に影響力を行使します。
企業の収益性を改善し、株価を上昇させ、投資家への利益を追求します。その過程で、彼らの活動は低位株の価値向上にも貢献し、市場において注目される存在となっています。
ヘッジファンドとのちがい
ヘッジファンドとアクティビストファンドの最大のちがいは、運用目的と戦略です。
ヘッジファンドの運用目的と戦略
- 運用目的
ヘッジファンドは、資産を多様な金融商品に分散投資し、リスクを管理しつつリターンを追求することが目的です。彼らはリスクヘッジの手法を使用し、市場の上昇や下降に関係なく利益を追求します。 - 運用戦略
さまざまな運用戦略を採用します。長期投資、短期トレード、アービトラージ(価格差益)、レバレッジ(借入資金を使って取引)、オプション戦略などが含まれます。
| 特徴 | ヘッジファンド | アクティビストファンド |
|---|---|---|
| 運用目的 | リスク管理とリターン追求 | 企業経営の改善と価値最大化 |
| 運用戦略 | 多様な運用戦略を使用 | 企業に対する積極的介入戦略を追求 |
| 株主としての影響力 | 通常、企業経営に直接影響なし | 企業経営に直接影響を与えることを追求 |
| 投資対象 | 多様な金融商品に分散投資 | 特定の企業株式に注力 |
| 株主提案や要求 | 通常、企業経営には関与しない | 提案や要求を積極的に行い、改善を促進 |
エリオット・マネジメントが日本株に投資するたった1つのワケ

エリオット・マネジメントが日本株に投資するたった1つのワケは「割安で利益が見込めるから」です。
例えば、株価の割安感を判断するために指標の1つであるPBR(株価純資産倍率)を利用します。PBRは「株価/1株あたり株主資本」で求められ、株主に属する資産に対し、株価がどのくらい評価されているかを示す財務指標です。
- PBRの値が1よりも小さい場合
企業の株価が純資産価値よりも低い場合、株価が割安である可能性が高い - PBRが1よりも大きい場合
株価が純資産価値よりも高い場合、株式が過大評価されている可能性がある
海外とPBRを比べた場合、1倍未満の企業は米国では5%、欧州24%、日本が43%と大きく差があります(上記画像参考)。
そして、2023年3月に東京証券取引所(東証)からPBR1倍割れの企業(約1,800社)に改善要請(引用:日本経済新聞)が求められました。この動きにより、日本企業も非効率な事業構造や資本構成を改善してPBRを上げる意欲が高まったのです。
このように日本の株式市場には、企業価値が実際の評価よりも低いとされる企業や、現金を保有し過ぎている企業など、潜在的な成長や株主還元の余地がある企業が多く存在します。
エリオット・マネジメントは、こうした企業に投資し、その価値を引き出す機会を見出しています。
エリオット・マネジメントの特徴3つ
エリオット・マネジメントの特徴を3つ解説します。
- 巨額の運用資金
- 「モノ言う株主」の投資戦略
- 国内外問わず投資
1、巨額の運用資金
エリオット・マネジメントは、2024年6月時点で約697億ドル(約10兆7000億円)もの巨額の運用資金を管理しています(引用:エリオット・マネジメント)。
年を経るたびに運用額が増えています。
この巨額の運用資金で数千億円分の株式を大量に保有し、国内外の企業に「モノ言う株主」として影響力を高めているわけです。
ちなみに、公開している株式ポートフォリオは、約2兆円にのぼります。
2、「モノ言う株主」の投資戦略
「モノ言う株主」は企業に対して要求する株主という意味ですが、その投資戦略は一般的には以下の通りです。
- 企業の株を大量保有する(持株比率を上げる)
- 企業への影響力を強め、経営に対して提案や改善要求をおこなう(モノを言う)
- 企業価値(株価)を向上させる
- 株主還元(自社株買いや増配)の強化、株式の売却など
個人投資家でも企業の株を一定数、保有すれば、株主総会に出席ができます。また、議決権が与えられるため、企業の経営に関与できます。
「モノを言う」ことに悪いイメージを持つ方がいるかもしれません。企業の価値を高める、利益を追求するというゴールは、企業も株主も同じであるため、決して悪いことではないでしょう。
とくに米国企業では「企業は株主のもの」という認識が強く、株価向上や株主還元(増配や自社株買い)にシビアです。
例えば、日本の大企業では内部留保(純利益で余ったお金)の多さが、たびたび指摘されます。このような状況を改善するために、自社株買いでの株価上昇、株主還元を提案するなどして、エリオット・マネジメントは利益を追求します。


3、国内外問わず投資
エリオット・マネジメントは、国内外を問わず投資します。
例えば、2001年にアルゼンチン国際はデフォルト(債務不履行)となりました。エリオット・マネジメントはアルゼンチン国債を割安に取得し、その後、全額の支払いを求めて訴訟を起こしています。
2016年にアルゼンチン政府は、国債に投資していた4ファンドに対して46.5億ドル(約5,300億円)を返済することで合意しています。
また、2022年8月には米国の決済サービス大手ペイパル・ホールディングスの株20億ドル強相当を取得したと報じられています。
さらに、2023年1月には米国の大手IT企業のセールスフォースの株を数十億ドル規模で大量取得したというニュースもありました。
日本国内にいたっては、過去に東芝やソフトバンクグループ、大日本印刷などの株を取得し、影響力を強めています。
このように、国や企業を問わず、数千億円規模の投資をおこなっています。
エリオット・マネジメント|過去の投資銘柄【海外】
エリオット・マネジメントが過去におこなった海外投資銘柄の代表例を紹介します。
- AT&T
- ツイッター(現X)
- ミラン
AT&T
2019年9月にエリオット・マネジメントは、AT&Tに対して約32億ドル(1社あたりの投資額としては過去最大規模の約3,500億円)を投資し、経営戦略の見直しを求める手紙を送りました。
これに応じAT&Tは、取締役会の定員増加や最高経営責任者(CEO)と会長職務の切り離しなどを含む3年計画を発表しました。
しかし翌年、エリオット・マネジメントは2020年7~9月に500万株を売却し、同社への投資を引き揚げています。
AT&Tは、米国最大の通信会社で、電気通信、メディア、技術サービスを提供しています。
ツイッター(現X)
巨大SNSツイッター(現X)を運営するツイッター社へも「モノ」を言っています。2020年3月、メディアでツイッター社に対し、「ジャック・ドーシー氏の最高経営責任者(CEO)退任を求めている」と報じられました。
ドーシー氏はCEO職に留まり、エリオット・マネジメントから取締役を受け入れました。また、株主還元として約2,000億円規模の自社株買いを実施することで合意しました。
このように、米大手企業に対して「モノを言うこと(要求)」に成功しています。
ミラン
ミラン(ACミラン)はイタリアのミラノを本拠地とするプロサッカークラブです。
エリオット・マネジメントは、2018年にACミランの経営権を取得し、その後クラブの基盤を立て直しました。この取り組みの結果、2021-2022シーズンに国内リーグで優勝しています。
その後、2022年6月1日に米民間投資会社「レッドバード・キャピタル・パートナーズ」とクラブ買収の最終契約を結びました。
クラブの価値は12億ユーロ(約1,666億円)。こうして、企業だけでなくスポーツチームのオーナーとしても優勝という結果を残し、クラブの価値を高め、売却し利益を出しています。
エリオット・マネジメント|過去の投資銘柄【国内】
エリオット・マネジメントが過去におこなった、日本国内の投資銘柄を紹介します。
- ソフトバンクグループ
- 大日本印刷
- 東芝
ソフトバンクグループ
エリオット・マネジメントは2020年2月に、ソフトバンクグループの株式を約3,340億円で取得(参考:Bloomberg)しました。
この投資は、ソフトバンクグループの株価が割安と判断された結果でした。当時、米シェアオフィスの大手ウィーワークのIPO(新規株式公開)の失敗などが影響していました。
市場の反応は、エリオット・マネジメントの投資に好意的でした。ソフトバンクグループの株価は2020年2月12日には一時14%高の上昇(参考:Bloomberg)を見せました。
さらに、ソフトバンクグループは自社株買い(2兆5,000億円)をおこない、株価は急騰。その後コロナショックによる市場の影響もありましたが、自社株買いの発表により、2020年末までに株価は大幅に上昇しました。
大日本印刷
創業146年を迎えた複合企業(コングロマリット)の大日本印刷。電気自動車(EV)用バッテリーやスマートフォン画面向けの精密電子部品で、高い世界シェアを誇っています。
2023年1月、エリオット・マネジメントが約390億円で5%弱の株を取得。これにより第3位の外部株主となりました。また、3月には2024年3月期から始まる新中期経営計画の中で、3,000億円の自社株買いをおこなうと発表がありました。
これとは別に2,500万株を消却する計画も発表され、大株主であるエリオット・マネジメントは、これらの計画を歓迎しました。
東芝
2015年の「不適切会計問題」以降、経営危機に陥った総合電機メーカー東芝。
2017年には、米原子力企業「ウェスチングハウス・エレクトリック」の買収に失敗し、巨額の損失を抱えることになりました。同年12月に6,000億円の第三者割当増資(新たに株式を発行して任意の団体や個人から資金調達すること)を実施します。
ここでエリオット・マネジメントは東芝の株式を取得し、同社の経営改革を求める動きを見せました。
ウェスチングハウス・エレクトリックの売却や、半導体事業の売却などを提言したのです。2022年8月には、東芝が半導体事業を売却することが決定し、同ファンドは売却益の一部を受け取りました。
ですが、2023年9月現在東芝はアクティビストファンドを事実上排除する目的で、株式非上場化を目指し、TOB(株式の公開買い付け)をおこなっています。
エリオット・マネジメントと「投資の神様」との関係
エリオット・マネジメントと「投資の神様」と呼ばれる世界的に有名な投資家ウォーレン・バフェット氏に直接の関係性はありませんが、以下の共通点があります。
- 企業買収
- 圧倒的な投資リターン
- 日本株に投資
- 割安株に投資
また、バフェット氏が率いる複合企業バークシャー・ハザウェイは、60社以上を買収、過去60年に渡り、株価を年平均20%成長させています。
2020年8月には、日本の5大商社株(丸紅・三井物産・住友商事・伊藤忠商事・三菱商事)をそれぞれ5%超を取得したと報道され、注目されました。
そして、2023年4月には、5大商社株の保有率を7.4%まで高めたとのことが明らかになったその日、軒並み5大商社株は3〜5%高となりました。
投資手法は多少異なりますが、両者とも株価が安いと判断される企業に投資して大きな利益を上げています。
エリオット・マネジメントに関してよくある質問
エリオット・マネジメントに関してよくある質問に回答します。
これまでの投資先は?
海外では、AT&T やツイッター(現X)・サッカーチームのミラン。国内では、ソフトバンクグループや大日本印刷・東芝などです。
今後も日本株に投資する?
割安と判断される企業が多い傾向があるため、可能性はあるでしょう。
ミランとの関係は?
2018年にACミランの経営権を取得し、2021-2022シーズンに国内リーグの優勝へ導いています。その後、2022年6月に米投資会社「レッドバード・キャピタル・パートナーズ」と買収の最終契約を結びました。
日本にもエリオット・マネジメントのようなファンドはある?
100円から投資できる投資信託「マネックス・アクティビスト・ファンド(引用:マネックス証券)」があります。「対話」によって企業の価値を最大限に高める取り組みをしているファンドです。
まとめ|日本株は世界の投資家が注目している
- エリオット・マネジメントは8兆円を運用する「モノ言う株主」ファンド
- エリオット・マネジメントは8兆円を運用する「モノ言う株主」ファンド
- 日本株は割安で、成長性が見込める投資戦略は割安株を大量保有・企業経営に介入・株主還元を提案
- 保有した銘柄は、AT&Tや旧ツイッター、国内ではソフトバンクグループや東芝、大日本印刷などの大企業
- 狙われた企業の株価は上昇する可能性が高い
- 日本にも個人投資家向けのアクティビストファンドがある
エリオット・マネジメントは、割安な株を大量に保有して企業経営に介入します。国内外を問わず、日本株にも投資しているのが現状です。
「モノ言う株主」はネガティブにとられがちですが、企業を成長させ、利益を追求する手腕に長けているのは事実です。
個人投資家もアクティビストのように、成長の可能性を秘めた企業に投資できれば、大きな利益を手にできるでしょう。



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